生物多様性の
とびら
生物多様性ってなんだろう?
どんなことができるの?
生物多様性ってなに?
地球上のいきものは、生命が誕生して以来、さまざまな環境に適応して進化してきました。いきものには私たち人間のほか、ゾウやリスのような動物、花や木々などの植物、キノコなどの菌類、バクテリアやプランクトンなどの微生物もふくまれます。地球はこのような生物であふれており、その種類は約500万種~3,000万種になるのではないかといわれています。
たくさんの生物は、それぞれが個々に別々に生きているわけではありません。食べたり、食べられたり、役に立ったり、じゃましたり、お互いに関わりあい、つながりながら生きています。こうしたさまざまな生物が存在し、互いに関係しながら生きていることを「生物多様性」といい、私たち人間をふくめたあらゆる生物が生きていくうえで欠かせない土台になっているのです。
しかし今、人間の活動などの影響により、この生物多様性が広く失われています。たとえば、食べ物や建物などをつくるための開発が、森や川や海を傷つけてきました。地球温暖化などの地球環境の変化の影響で、たくさんのいきものたちが今までのようにくらせなくなっています。私たちが別々のところから持ちこんだいきもの(外来種)が、もともとその場所にいたいきもの(在来種)を食べてしまったり、未知の病気を持ちこんだり、すみかや食べものをうばったりしています。
この「生物多様性のとびら」では、こうした問題と、その解決のために私たちができることを考えていきます。
生態系・種・遺伝子の多様性
生物多様性には「生態系の多様性」と「種の多様性」、「遺伝子の多様性」の3つのレベルがあります。
種の多様性
生物の世界には、森林にすむ動物や、空を飛ぶ鳥、川を泳ぐ魚、森林の樹木・草花など、いろいろな動物や植物が生きています。動物だけでも、哺乳類、は虫類、鳥類、魚類、両生類などのグループがあり、たくさんの「種」からなりたっています。たとえば哺乳類は約6千種、鳥類は1万種以上ともいわれています。このように動物や植物などがたくさんの種からなりたっていることを「種の多様性」といいます。
わたしたち人間も、地球にすむ生物のひとつだよ。哺乳類の「霊長類 ヒト科 ヒト属」に属している「ヒト」という種なんだ。
生態系の多様性
「生態系の多様性」とはそれぞれの地域に多様な生態系があることです。日本では海、森、川、雑木林、高原、湿地、草原、干潟、田んぼなど、それぞれの自然に合った生態系がつくられ、さまざまな生物たちが関わりながら生きています。同じ「森」でも北海道と沖縄県では気候がちがうので、生態系も異なります。
遺伝子の多様性
これらたくさんの生物の種は、さまざまな遺伝子によって、なりたっています。「遺伝子」とは、生物の体をつくる設計図のようなものです。
たとえばみなさんは、友達と同じ「ヒト」という種ですが、顔や体などの特徴はちがいますね。これは遺伝子がちがうからです。ちがう種はもちろん、同じ種でも、1人1人、1頭1頭、ちがった特徴を持つこと、これをもたらすのが「遺伝子の多様性」です。
生物多様性のめぐみ
私たちのくらしは食料や水、気候の安定など、さまざまな生物が関わりあう生態系のめぐみによって支えられています。たとえば植物は私たちが生きるために必要な酸素をつくり、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収してくれます。
私たちは森の土や川や湖の自然が育む水を飲み水にしています。肉や魚、野菜などほかの生物を食べています。木材でつくった家にすみ、家具を利用し、植物の繊維や動物の毛などでつくった服を着ています。病気を治してくれる薬だって、生物がいなければつくれません。生物多様性が豊かな自然は、私たちの命とくらしを支えているのです。
わたしたちがピクニックやハイキングに行って野原で楽しんだり、里山で自然体験をしたり、森林のなかを散歩してリラックスした気分になれるのも、さまざまな植物があるおかげだよね。
生物多様性の危機
今、世界の生物多様性は危機にさらされています。動物や植物、魚などはたくさんの種からなりたっていますが、これらのうち4万種以上が地球上で絶滅しかけています。また、森や海の自然も世界の各地で失われており、私たち人間が生きるうえで必要な自然のめぐみも失われつつあります。これらは人間の活動によるものであり、おもに次のような原因によって引きおこされてきました。
土地や海洋の開発(森林伐採など)
土地の開発や埋め立てにより生物が生きられる場所がどんどんへっています。近年は森林でおこる大規模な火災もふえ、生物の命とすみかをうばっています。
世界では、農作物生産や家畜を飼うために森林を伐採し、湿地や草地を畑や牧場に変えることがおこなわれています。また、海底の下に埋まっている石油を取り出すために海底を掘ることで、海や生物への影響も心配されています。
乱獲や密猟
これまでさまざまな生物が人間の乱獲(ほかの生物の命をむやみに大量にうばうこと)や密猟(法を破って猟をすること)によって絶滅しました。
たとえば、日本でもすでに絶滅してしまったニホンオオカミやニホンカワウソも、乱獲の影響を強く受けていたとされています。現在でも、めずらしい野生動物がペットとして飼うためにつかまえられ、売られたりしています。海では、一部の魚や貝類などが違法な乱獲によってへり続けています。
マレーシアのボルネオ島など東南アジアの熱帯林にすむオランウータンは、人間による森の開発やペットにするための乱獲などによって、絶滅の危機にあるの。アフリカゾウも、牙を象牙にして売る目的で殺され、絶滅するおそれがあるんだよ。
汚染(海洋プラスチックなど)
近年では、とくにプラスチックごみが海に流れ出ていることで、海を汚し、いきもののすみかと命に影響を与えていることが問題になっています。
すでに世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トンです。そこへ少なくとも年間800万トン(ジェット機5万機分くらいの重さ)が、新たに流れこんでいると考えられています。
プラスチックをふくむ海のごみの影響により、魚や海鳥、アザラシ、ウミガメなど約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしています。
地球温暖化
地球温暖化による気温の上昇や気候の変化により、生物がこれまでと同じ場所にすみ続けることができなくなっています。海氷が減少し続けている北極圏にすむホッキョクグマをはじめ、多くの野生生物が絶滅の危機に追い込まれています。
また、地球温暖化は地域的に雨の減少、干ばつ、異常乾燥や熱波、強風など気候の変化をもたらし、森林火災の被害を拡げてしまいます。森林の木々が燃えることで二酸化炭素がさらに発生し、地球温暖化がいっそう進むと心配されています。
私たちができること
生物多様性が豊かであることによって私たちは生かされていること、一方で人間の活動によってその豊かさがそこなわれていることについて学んできました。この問題は世界中の人たちが協力して解決する必要があります。そのためSDGs(持続可能な開発目標)のなかに、地球環境を守るための目標として、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」という目標が入っています。
SDGsというと一見大きな話のように思えますが、私たちが生物多様性を守るためにできることはたくさんあります。
エシカル消費をおこなう
魚や貝などの水産物や、紙の原料となる木材は自然のめぐみにより生み出されているものです。これらを利用しなければ、人間は生きていくことができません。魚や貝は、陸の上にすむ動物と同じように卵や子を生み、ふえていくので、私たちはその量や速さを考えて漁をすれば、この海のめぐみをつかい続けることが可能です。木材の場合も、樹木の育つスピードや、森の環境全体におよぶ影響を考えながら林業をおこなえば、樹木をすべて伐採する必要はないでしょう。このように資源の持続可能性に配慮しながら生産された製品には、その証としてFSC®やMSCといった認証ラベルをつけることができます。
「エシカルのとびら」で、エシカル消費とは他の人々や社会、地球環境への影響を考えて商品やサービスを選ぶ消費のしかたであると説明しました。生協のお店や商品カタログ、スーパーなどで、こうした「認証ラベル」のついた商品を選んで買うことも、私たちができる「エシカル消費」です。
むだにしないで大事につかう
私たちの食べ物や衣服、おもちゃなど身のまわりのものをつくるときや廃棄するときには、森林や水、エネルギーをつかい、汚染物質(人や動植物、生活環境にとって好ましくない影響を与えるもの)を出します。それによって生物多様性になんらかの悪影響を与えます。そのため、まずはむだな消費をへらすことが大切です。
また、買ってすぐに捨ててしまう商品ではなく、できるだけ質がよくて長持ちするような商品を選び、それを大事につかうことによって、商品をつくるときと廃棄するときに発生する生物多様性への悪影響を大きくへらせます。
自然のめぐみを意識しながら食事をする
私たちの日常生活のなかで、とくに生物多様性に大きな影響を与えている活動のひとつが、食事です。食べ物の生産には、森林を伐採して開発した農地や水やエネルギーをつかうため、生物多様性を失わせるおもな原因になっています。
とくに牛肉や豚肉をつくる際には、家畜の牧場や飼料(エサ)として与える穀物の栽培などのために広い土地と大量の水を必要とするため、できるだけ大事に食べる心がけが重要です。
自然のめぐみによって私たちの食べ物がつくられていることを忘れず、必要な量だけを食べ、食べ残しや廃棄など食品ロスは出さないようにしましょう。食品ロスについては「循環型社会のとびら」でくわしく学べます。
自然やいきものにふれる
地球上の動物や植物がどのような生態系をつくっているのか、自然やいきものにふれ、調べてみましょう。生協が株式会社バイオームといっしょにやっている「コープいきもの探しクエスト」では、楽しく生物多様性を学ぶことができます。
また、生協では「コープの森」などで植樹や森林整備などをおこなっている生協があり、また川や里山での自然体験、海岸での清掃活動など親子で参加できる企画をおこなっています。みなさんが加入されている生協の企画を調べて、ぜひ参加してみてください。
生協だけでなく、多くの団体が生物多様性の保全のためにさまざまな活動をおこなっているんだよ。たとえば日本の里山の自然環境保全に取り組んでいる団体もあれば、アフリカのサバンナでゾウやサイなどの野生動物保護のために活動をしている団体もあるの。
自分が参加できない場合は、寄付をしてこういう活動を応援することで、生物多様性の保全に役立つこともできるね。自分の好きな生物や自然を守っている団体を探して応援してみるのもいいよね。
【監修】WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、サステナブルな社会の実現を推し進めています。特に、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に向けた活動をおこなっています。ぜひWWFをご支援ください。
https://www.wwf.or.jp/
もっと学びたい方は
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おすすめの資料
- 「いきることはつながること。じゃばら絵本 」 (環境省)
- 「ぬりえやワークブックで動物を学ぼう!WWFのお家で遊べる子どもむけ教材」(WWFジャパン)
- 「持続的な社会を考える 新しい環境問題 生物多様性」 (監修 古沢広祐/金の星社)
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