脱炭素社会の
とびら

脱炭素社会ってなんだろう?
どんなことができるの?

暑い日や大雨の日が
多いと感じませんか?

最近、暑い日や大雨の日が多いと感じませんか?実際に、日本もふくめて世界全体の平均気温は上がっており、産業革命からの200年ほどの間に約1.1℃上昇しました。2018年の夏は、埼玉県熊谷市で最高気温が41.1℃に達する記録的な高温となり、近年の平均に比べて約2倍の9万人ほどの人が病院に運ばれる異常事態となりました。

大雨の日もふえています。気象庁によると、1日に100mm以上の雨が降る大雨の日や、1時間だけで50mm以上の雨が降るたいへん激しい雨(滝のようにゴーゴーと降り続く雨)がふえています。その一方で、雨の降る日はへっています。

こうした気候の変化は私たちの食べ物の生産にも影響を与えます。お米の品質が低下し、ぶどう、りんご、かき、うんしゅうみかんなどの果実では色づきが悪くなったりしています。

気温の上昇により、海の水温も上がっています。水温が上がると海水が膨れて大きくなり、陸上の氷がとけることによっても海水がふえるので、海面水位(海の表面の高さ)が世界的に上がります。これまで砂浜だったところが海水におおわれ、砂浜が消えて海になる事態が世界でおこっています。

北極海の氷もとけて減少しています。これにより、ホッキョクグマなど、海氷をすみかとする野生生物は絶滅するおそれがあります。このような気温上昇や大雨、私たちのくらしへの影響はなぜおこるのでしょうか。そのおもな原因が、地球温暖化です。

地球温暖化って
なんだろう?

私たちが生活している地球には、太陽からの光(エネルギー)が海や陸にふりそそいでいます。地球は太陽からのエネルギーであたためられるとともに、地球からも宇宙に熱を放出しています。地球からの熱の一部を吸収し、地球の表面から熱を逃がさない役目をしているのが、「温室効果ガス」です。これまでは、この地球のまわりにある温室効果ガスが、温室のように地球を快適な温度にしてくれていました。

しかし、温室効果ガスがふえ過ぎると、宇宙に熱が逃げにくくなり、どんどん地球が暑くなってしまいます。人間活動によって大気中にふえている温室効果ガスには、二酸化炭素のほかにメタンなどもありますが、一番影響が大きいのが二酸化炭素です。 つまり二酸化炭素がふえて、地球の熱がこもってしまうこと、これが地球温暖化です。

出典:地球温暖化のメカニズム(環境省)

現在の地球の平均気温は14℃前後だけど、温室効果ガスがまったく存在しなければ、地球からの熱が効率よく宇宙に放出されてしまうので、地球の平均気温は今よりずっと低いマイナス19℃になるといわれているよ。温室効果ガスは、地球を暖かいままにする役割を果たし、わたしたちがすみやすい環境をつくっているんだね。

気温はどこまで上がっていくの?

人類の歴史のなかで、二酸化炭素が大きくふえ始めたのは1850年頃です。当時、イギリスを中心として世界ではものづくりのかたちが変わりました。「農業」から「工業」が中心になり、大規模工場で多くの機械をつかい、商品を大量に生産できるようになりました(これを「産業革命」といいます)。これらの機械を動かすとき、おもに石炭を燃やしたエネルギーをつかったことで、大量に二酸化炭素が排出されました。これ以降現在に至るまで、世界の経済を発展させ、くらしを豊かにするために、人間はたくさんのエネルギーをつかい、二酸化炭素を出し続けてきました。

二酸化炭素の増加にともない地球の温度も上がります。このまま二酸化炭素の増加が止まらなかったら、気温はどこまで上がるのでしょうか。私たちが、二酸化炭素の排出をへらすためにくらしや経済のあり方を変え、最大限の対策をおこなった場合でも、2021~2040年には1.5℃まで上がるとされています。逆に、まったく対策をせず、今のまま石炭や石油など化石燃料をつかい続ける生活を変えない場合は、2100年までに最大で5.7℃まで上がるといわれています。

出典:JCCCA全国地球温暖化防止活動推進センター

燃やしてそのエネルギーを利用するための材料のことを「燃料」というの。それらのうち、石炭や石油、天然ガスのように地面を掘って取り出す燃料を「化石燃料」というよ。化石燃料は、数千万年前から数億年前も昔の植物や動物の死がいが地層の中にうもれ、熱や圧力によって、長い時間をかけて燃料となったものなんだよ。
化石燃料を燃やすと二酸化炭素を発生させるため、地球の温暖化の原因となるんだね。

将来、
私たちのくらしは
どうなっちゃうの?

ここまで気温が上がると、私たちのくらしへの影響は非常に大きくなります。このページのはじめに学んだような台風や洪水などの気象災害や、これまでにない大雨やきびしい暑さといった異常気象が今まで以上にふえていきます。そして、下の表のように私たちの命や、地球の自然、食べ物にさまざまな影響をもたらします。

このような世界になると、みなさんの家族や友達のくらし、みなさんが好きな食べ物やスポーツはどうなるでしょうか。みなさんがすんでいる街はどうなるでしょうか。想像してみてください。

<2100年に起きると言われていること>

出典:気候変動アクションガイド

世界気象機関(WMO)の「2050年の天気予報」では、このまま地球温暖化が進んだ場合の日本の天候や、世界の状況を見ることができるよ。また、WWFジャパンの「未来47景」では、地球温暖化が変えてしまった未来を47の都道府県ごとに見ることができるの。
わたしたちがすむ街をこんな未来にしないために何ができるか、みんなで考えてみよう。

めざすは脱炭素社会

これ以上の地球温暖化をおさえることは、日本だけではなく世界中が取り組まなければならない問題です。そこで2015年に、世界の国がフランスのパリに集まって話し合いをしました。ここでは、地球の気温を少しでも低くするために、今よりも二酸化炭素などの温室効果ガスをできるだけ早く、できるだけたくさんへらし、石油などの化石燃料にたよらない社会をめざすこと。そのためには世界全体の目標を「気温上昇を2℃よりかなり低くおさえる」とともに、「1.5℃未満に向けて努力する」という約束が交わされました。これが「パリ協定」です。

しかし、世界の平均気温はすでに1.1℃上がっています。これより上がらないようにするには、すべての国が、これまで以上に二酸化炭素などをへらす取り組みをしていかなければいけません。日本では、エネルギーの使用量をへらす省エネルギーにできるだけとりくんだうえで、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの使用をもっとふやし、温室効果ガスを出さない「脱炭素社会」をめざしています。

生協でも、お店の屋根に太陽光パネルをのせて再生可能エネルギーをつくったり、省エネ型の照明や冷蔵・冷凍ケースを入れたりしています。また、みなさんの家に商品をお届けするときのトラックの運転ではエコドライブを心がけ、ガソリンなどの化石燃料をつかわずに電気で走るトラックの導入を進めています。

私たちができること

日本人1人が生活のなかで排出する二酸化炭素などの温室効果ガスは、1年間で約7トンといわれています。世界の平均気温の上昇を1.5℃未満にするには、これを2030年までに約3トンまでへらす必要があります。今より二酸化炭素を半分以下しか出さないようなくらしに切り替えるということです。それを目標に、私たちができることを紹介します。

1.学ぶこと

まずは地球温暖化のことをより深く理解できるように、本やWebサイトで学んでみましょう。できれば両親やきょうだいなど家族、友達と一緒に学んだことについて話し合ってみましょう。

2.調べて見直すこと

地球温暖化を、どこか遠い場所でおこっていることではなく、自分に関係すること(=自分ごと)として考えることが大切です。
ここに紹介する2つのWebサイトでは、自分自身の日常生活から、1年間にどれだけの二酸化炭素が出るのか(カーボンフットプリントといいます)わかりますので、試してみましょう。そして二酸化炭素をへらすために何をどう見直すとよいのか考えてみましょう。

3.行動すること

自分の生活のどこから二酸化炭素が多く出ているのかわかったら、それをへらすための行動をしましょう。「気候変動アクションガイド」も参考になります。

たとえばエシカル消費として、認証ラベルがついた商品を買うこと。エコマークは、商品をつくるところから捨てるところまで、二酸化炭素の排出が少ないなど環境負荷が小さい商品につけられるラベルです。

食品ロスを出さないことも温暖化対策になります。残った食品ごみを運んで燃やすときには電気やガソリンがつかわれ二酸化炭素が発生します。食品ごみが出なければ、その発生を防ぐことができます。

エネルギーをできるだけつかわないようにすることも大切です。エアコンの温度設定を変える、電気はこまめに消す、冷蔵庫の中を整理する、家電はできるだけ省エネ製品を選ぶなど、みなさん一人ひとりがすぐにでもできる省エネの取り組みもあります。

4.変えること

温室効果ガスを出さない「脱炭素社会」を実現するためには、自分の生活だけでなく、最終的には社会の常識を変えることが必要です。たとえば日常的な行為において二酸化炭素が出ないのが当たり前、再生可能エネルギーをつかうのが当たり前というライフスタイルになるために、社会の仕組みやルールが変わらなければなりません。

そのために、温暖化問題に関心のある友達をふやしたり、温暖化対策に熱心な生協や企業、自治体や政治家を応援したり、自分の考えを発信したり、署名活動に参加しましょう。一人ひとりの小さな取り組みを、仲間と一緒に大きな波にして、社会を変えていきましょう。

出典:気候変動アクションガイド
江守 正多

【監修者】江守 正多

東京大学 未来ビジョン研究センター 教授/国立環境研究所 上級主席研究員

1970年神奈川県生まれ。1997年に東京大学大学院 総合文化研究科 博士課程にて博士号(学術)を取得後、国立環境研究所に勤務。2021年より地球システム領域 副領域長。社会対話・協働推進室長。東京大学 総合文化研究科 客員教授。2022年より現職。専門は気候科学。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次および第6次評価報告書 主執筆者。著書に「異常気象と人類の選択」「地球温暖化の予測は『正しい』か?」、共著書に「地球温暖化はどれくらい『怖い』か?」「温暖化論のホンネ」等。

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